素直になりたい。
「鷲尾さーん」

「何?」

「お疲れ様。はい」

「毒入れてないよね?」

「俺に対する信頼はゼロか」

「ゼロに決まってる。だって、信頼されるようなこと、1つもしてないじゃん」

「あっそ」


あんなに争ったけれど、最終的には帰りにお茶をもらえた。

櫻庭と並んで歩くと注目の的になっちゃうから、私は2歩後ろを着いていった。

幸いにも櫻庭に何も言われることもされることもなく、心穏やかな状態で教室の入り口まで戻ることが出来た。

が、しかし...


「天羽くん、今日も朝練?」

「まあね。最後の高体連くらい全国優勝したいから」

「えっ?全国?」

「すっごーい!全国目指してるの?」

「頑張ってね!」

「もちろん。応援ありがと」


クラスの女子たちが入り口に1番近い天羽くんの席でキャーキャー騒いでいた。

櫻庭と人気を二分する彼は、櫻庭と違い王子様系男子。

この分だといずれ完敗するな。

ひれ伏して私の前に現れる櫻庭の姿を想像する。

ふふっ、いい気味。


「また不気味な笑み」

「うるさい」


睨んでから入ろうと思った、その時。
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