素直になりたい。
夕食を食べ終え、テレビからの呑気な笑い声とザトウクジラの鳴き声のような豪快ないびきが、リビングにこだましている。

というのも、明日の仕事が心配になるほど飲みまくった父はソファで爆睡中だからだ。

私もまたうとうとしながら、その騒音に耳を傾け、必死に目をこじ開けようとしていた。

と、その時。


「そうだ、直ちゃん。家はどうするんだい?ここに戻ってくるなら、ばあちゃんは大歓迎だよ」


食器の片付けを終えた母がお風呂に行ったところで、祖母が口を開いた。


「ごめんね、おばあちゃん。私、もう次の家探してるの。シェアハウスって言ってね、友達と暮らすんだ」

「本当に友達かい?」


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