素直になりたい。
そう、1人でもんもんと考えていると、部屋のドアがノックされ、祐希さんが入ってきた。


「新大くん、無事着いてぐっすり眠ってるって。じゃーん!寝顔、送ってもらったゃった!ってか、新大くんて超イケメンだよね?直ちゃんは新大くんと一緒に過ごしててなんとも思わないの?」


思わないことはない。

常に何かを思ってる。

櫻庭に対して何かを感じてる。

実をいえば、練習を盗み見たりしてた。

どこで何をしてるのか、再会してからというもの、ずっと気になっていた。

復讐のタイミングを見計らうために櫻庭の観察を始めたのに、いつしかやめていた。

これ以上、知ってはいけない気がして。

知ってしまったら、戻れない気がして。

なんでこんなに知りたくなるのか分からないけど、

ただ怖くて。

なんだか、すごく怖かった。

だから、私は櫻庭から遠ざかって。

でも、なぜか近付いてしまって。

知りたいし、知りたくない。

近づきたいし、遠ざかりたい。

そんな矛盾した感情がずっと私の中にあって、

ごちゃ混ぜになって

制御不能になって

それで今、

何も分からなくなった。

櫻庭に対する感情が

見えなくなった。

いや、消えたの?

消えてどこにいったの?

一体、どこに?



< 62 / 372 >

この作品をシェア

pagetop