素直になりたい。
「直ちゃん」

「あっ...」


祐希さんに肩を叩かれてようやく我に返った。

ずっと私は何を考えていたんだろう。

なんでこんなに考えていたんだろう。

なぜ?

...なぜ?

......なぜ?


「素直になりなよ、直ちゃん」

「えっ?」


祐希さんが灯りの真下に入り、その表情がはっきり見える。

それは、いつの日かの母の凛とした横顔にどこか似ていた。


「好きでも嫌いでも普通でもいい。とにかく、気になるんでしょ、新大くんのこと。

だったら、飛び込んでみなよ。知り尽くしてみなよ。

そしたら、本当の彼が見えて答えが出るから。

答えが正でも負でもいい。
とにかく、その過程を踏んでみな。

人生の先輩のワタシからのアドバイス。じゃ、そういうことだから」

「ちょ、ちょっと!祐希さん!」

「あ。写真送っといたよ。イケメンはご利益あるから、保存しときな」


祐希さんは言うだけいっていなくなってしまった。

残されたのは、乱雑な部屋の中で1つだけ空っぽの私の心だけ。

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