素直になりたい。
私は学校が終わるや否やパン屋に直行した。

朝10時オープンだったのだけれど、売れ行きはどうなのだろう。

気になってしかたがなくて、課題も手に付かなかったほど。

仕方がなく見るだけで良い英単語の暗記に励んで半日を終えた。

そして今からバイト。

店長に看板娘なんて言われちゃったから張り切って売らないと。


「おはようございます」

「おっ、来た来た!おはよ、直禾ちゃん」

「おはよ、直ちゃんっ!黒柳さん、この子が噂の看板娘ですよ!」

「あら、可愛いこと。お名前は?」


恐らくご近所のマダムだろう。

キラキラのスパンコールが所々にあしらわれた、いかにも高そうな黒いレースのブラウスをお召しになっている。

ごくんと唾を飲み込む。


< 66 / 372 >

この作品をシェア

pagetop