素直になりたい。
そして、その帰り道。

なぜか私は櫻庭と先に帰された。

両手には大量のパンを抱えて歩く。


「片方持つ」

「いい。櫻庭だっていっぱい持ってるじゃん」

「あのさ、強がんない方が良いと思うけど。持つって言ってんだから、素直にお願いすればいいんだよ」

「櫻庭のそういうとこ、すっごいムカつく」


そう言いながら真横に突き出した。

が、しかし...


「えっ?」


櫻庭が私の腕を掴んだ。

しかも、すっごい強い力で。


「痛いんだけど。離して...」


その後に"バカ"って続けようとしたけど、やめた。

やめたというか、消えた。

喉まで出かかっていた言葉が、蒸発して無くなってしまった。

だって、櫻庭が...


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