素直になりたい。
「ほんと、ごめん。迷惑かけた」

「ほんとだよ。大いに反省してください」


櫻庭が泣き止んだのは、10分後くらいだった。

三日月が優しくこちらを見つめている。

私と櫻庭は新緑の桜並木の一角にあるベンチに腰かけながら、パンの包装をぶりぶりと破いてとにかく口に詰め込んだ。

沈黙が怖いから、ひたすらにもぐもぐして話しかけられないようにしている自分をバカだなぁと思いながら。


「うま」


櫻庭が唐突に一言呟く。


「何が?」


聞かなくてもいいのに、聞く私は相当バカ。


「きなこ揚げパン」

「また揚げパン?絶対櫻庭の方が揚げパン好きだよね?購買でもいっつも揚げパンばっか買ってるし」

「なんで知ってんの?もしかしてストーカー?」

「だから、そういうとこだって。いい加減学んだら?」


学習を忘れた男にこれ以上かまいたくもない私は、3こ食べて立ち上がった。


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