素直になりたい。
「いやぁ、良かったぁ。やっぱあの2人は最強だわ。カッコいいし、可愛いし、一生推せる」

「ヲタクですかぁ?」

「悪い?」

「別に」


無事最終上映が終わり、今は余韻に浸りながら駅までの道を歩く。

結ばれると信じていたけど、でもやっぱり結婚式のシーンは感動してしまった。

今まで紆余曲折あって、ようやく愛を誓えたんだよ。

泣かない理由なんて1つもない。

もう私はぼろ泣きで、2列前のおばさんが振り向いてしまうほどに泣いた。

そういえば、そのせいで櫻庭が必死に頭を下げてくれたんだっけ。

それは謝らなきゃだ。


「櫻庭、あのさ...」

「この前、なんでこれ観なかったの?」

「え?」


突然すぎる質問。

なんでって言われても...

それはまぁ...


「だって、ラブコメなんて下らないって思われたら嫌じゃん。ってか、そういう櫻庭こそなんで観なかったの?いや、そもそもラブコメになんて興味あったんだ。そこがまず驚き」


なんて言うと口を尖らせられた。


「悪い?」


何、この顔...。

面白い...。

吹き出しそうになるのをぐっとこらえて、私は矢継ぎ早に言葉を並べる。


「いや、全然。むしろ仲間がいてくれて良かった。こんなので喜んでるなんて子供なのかなって思ってたけど、櫻庭も同類みたいで、なんか安心した」

「安心?意味不明」


確かに。

自分でも意味不明。

でも、もっと意味不明なことがある。

私はずっと疑問に思っていたことを口にした。

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