蓮華尼、バンボ
 太助は、方方に花を売り歩く男であった。理由は、人の心を美しくしたいからだった。山々にも花を植えに行って、主に百日草だった。
 多年草で、地方でも喜ばれた。ある日蓮華尼と言う僧安に恋をした太助。花を植えている最中、恐ろしい美女が太助の手を踏みやった。汚らわしい。
 あ、申し訳ありません。失礼致しました。一輪の百日草が、折れてしまった。何と言う事だ!そう言って蓮華尼にもの言おうとしたが、もうそこにはいなかった。何だったんだ、あの美女は。
 蓮華尼は不愉快そうにもう走り去っていた。
 彼女は、彼と呼ばれるくらい男勝りの女で、背丈は百八十センチはあった。幼い頃は大人しくしとやかだった彼女。
 一番の美女ともてはやされ勝気になったと言う。年端は二十歳であった。方方の男を愛し、失った僧安で、一人きりになった。美しい彼女を皆気にしていた。
 苗字は大御神と言った。そんなにも古い話だ。その美貌はまさしく神と呼ばれた。月の無くなる深月、蓮華尼はでいだらと化す。山々を闊歩し、男を探し歩く。見切り付かないまま探し帰る頃には美女に戻る。
 太助は見る事が無かったと言う。噂で聴いた事はあったが、別の人だと思った。太助は、死後小仏となり百日草になる男であった。可愛らしいと言われて喜んでいた。
 ある日見合いを頼まれてなんと蓮華尼であった。五十人娶るとの事。何と選ばれて仕舞った。蓮華尼は高過ぎるヒールを履いて蹴る準備万端、太助はと言うと静粛にも参った。お堂の中で、皆安んじる事も無かった。
 一人一人吟味した蓮華尼は、白昼夢を見せてやろうと言った。でいだらだった。大きな百メートル近い白の象だった。彼女、何と白象の御霊であった。
 美貌過ぎる私には相手はいない。太助などぶん倒してしまった。相手では無い。俺の相手は百日草だ。蓮華尼は何と自分の白象について述べた。
 何と、本名はバンボだとの事。バ、バンボ。唖然とした太助は最早好きになった振りだ。
 昔、一人の少年と恋をしたのよ。でも、叶わなかった。私の方が振り返り様背が高くて白象で、泣いて別れを告げたのよ。
 実はバンボは古い荒御霊慈母で、此れは名も無き村に当てた法要だったそうだ。僧安の美女バンボは、未だ何億の世を越えても、人を好きになるそうだ。
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