i -アイ-
第一章___足跡
黎鳳学園
人通りの少ない路地の自販機のそばにバイクを置き、自販機で温かいコーヒーを買う。
2月もあと数日で終わる。
まだまだ外気は突き刺すように冷たい。
両手で缶を包み、暖を取る。
やっと熱いコーヒーを飲み干したところで、人より優れた聴覚が反応する。
「行くかぁ」
自販機の隣にあるゴミ箱に缶を捨て、メットをかぶりバイクに跨る。
今は22:30。
早めに終わらせて帰らないと、利人さんに怒られるだろうなぁ。
たどり着いた空き倉庫の扉は全開。
バイクでそのまま中に入る。
月明かりが若干差し込む倉庫は物が少なく、バイクのエンジン音が響く。
エンジンを止め、後ろを向いた状態でメットを取り、パーカーのフードを被る。
「……お前、誰」
倉庫に居たのは、二人の男。
1人は立っていて、1人はうつ伏せで転がっている。
声をかけてきたのは立っている方。
「どうも、こんばんは。」
立っている方はスーツに黒のワイシャツ。ワイシャツの首元は2、3個ボタンが開いていて、銀のネックレスが覗く。
若干長めのセンターパート。緩くパーマのかかった髪型のその人は、冷静にこちらを眺めている。
「その子、REIGNの子かぁ」
うつ伏せで転がっている男は金髪で、所々血が固まり、黒ずんでいる。