i -アイ-
「……海崎くん、優しいからこの世界は向いてなかったんだよ。」
けれどその言葉の時だけは、声が凄く優しくて。
「……ぅ、ぐ」
うつ伏せで起き上がることも出来ない銀髪が、嗚咽を漏らす。
「ムショで、頭冷やせばどーにかなるでしょ。つか、して欲しいな」
そう言って銀髪の頭をくしゃくしゃと撫でた i の手を、銀髪が掴み、
「助……けて」
悲痛なその声。
i はその手を振り払う。
「生きるか死ぬかはてめえ次第なんだよ。甘えんな」
言葉とは裏腹に、やはりその声は優しくて。
また、銀髪の嗚咽が響く。
その光景を眺めていた俺に i が近づき、腕を掴み自分の首に回し、俺を立ち上がらせ支えるように歩く。
i は無言で古びたビルから外へ俺を運び出し、バイクに俺を乗せた。
「掴めそう?」
「ああ」
「なるべくゆっくり行くから」
慣れた手つきでメットを俺にかぶせ、自分も被りバイクを走らせる。
着いたのはREIGNの溜まり場であるマンション。
しかし、そこに着くまで遠回りをしてきた。
尾行でも巻いたんだろうか。
俺のメットを取り、
「ごめん、ちょっと我慢して」
そう言って俺の首筋に顔を埋めた i に、俺はピクっと反応する。