i -アイ-
「ん。大丈夫。寝れば抜ける」
「……薬か?」
「うん。危ない薬は使われてないよ」
そう言ってまた俺を支えて歩く。
家の前でスマホを取りだし、コールする。
「三國、開けて」
俺は少しずつ、慣れてきた。
……i が、久遠藍人であることに。
「……早速か」
扉を開けた三國の声に何も答えず、ズンズンと中に入っていく久遠は、俺を寝室へ連れていき寝かせる。
「ダルいでしょ?今水持ってくるから」
そう言って立ち上がろうとする久遠。
「……久遠」
俺の声に動きを止める久遠。
「助かった、ありがとう」
礼を言うのが、驚きで遅くなった。
久遠は、笑わずに俺を見つめる。
その瞳は、澄んでいるのに何故か目を合わせ続けることをやめてしまいたいと思った。
久遠は何も言わずにまた立ち上がり、部屋を出ていった。
そして、水を持って戻ってきた。
「飲んで」
「ああ」
「今日はゆっくり休んで。回復したら話をしよう」
そう言って部屋を出ていった久遠。
ピリピリと手足が刺激されるような感覚。
ドクドクといつもより強い脈。
俺は目を瞑って、早くこの感覚から解放されたいと思った。
俺は誰より優れていたい。
けれど、俺の周りは優秀すぎる。
どれだけ自分が平凡かを痛感する。