i -アイ-
橘三國side
机に置いてある俺のスマホが震える。
表示された名前は、藍。
耳に当てれば
『三國、開けて』
先程出ていったばかりなのに、藍は入口にいるらしい。
嫌な予感がした。
まだ、俺と暁と蓮はここにいる。
けれど、司と優介は帰った。
扉を開ければ、
「早速か」
顔色の悪い優介を支えている黒パーカーを着た、藍だった。
俺を一瞥もせずに、部屋に入り、寝室へ優介を連れていった藍は数分で出てきて、
「水、貰うよ」
誰に向けたものか分からないほど、こちらに興味を示さないような冷たい声。
寝室へ水を置いてきて、また出てきた藍はキッチンで手を洗い始める。
液体洗剤で、着いた血を洗い流している。
「怪我したのか」
その俺の問いかけにも答えない。
手を洗い終わった藍は、ソファに座る。
「三國、悲報だ」
藍は、洗ったその冷たい手で自分の額を冷やす。
「いいや?朗報か」
目を瞑る藍が、口角だけ上げる。
藍は少し興奮しているらしい。
「司さんに一応連絡入れてみて。あれから家出てないといいんだけどなぁ」
まるで、尾行していたかのような口ぶり。
俺は蓮に連絡するよう言い、藍の話は俺が聞くことにした。