i -アイ-
それから大人しくなった蓮を家まで送ることにした。
「うわ、デカい家だなぁ」
「普通だろ」
いや、普通ではない。
碓氷家もそうだけど、佐伯家も和な感じなんだな。
「じゃあな」
「入ってみるか」
「え?」
そんな、入りたそうな顔してたか?
「蓮?」
低い声が聞こえ、現れたのは
「親父、いたのか」
佐伯慎(さえきしん)。蓮の父親。
「ああ、明日から出張で今日の夜に発つんだ。だから、蓮に会えるかな〜ってな。」
はあ?と冷たい返しをする蓮だけど、別に嫌そうでもない。
それと、慎さん。あたしに気付いてて普通に話してる。
少しあたしを見た時、目を見開いた気がするけどすぐに蓮に目線を移した。
分かってる、人だ。
でも、秘書っぽい人とか色んな人が慎さんの後ろにいて、蓮もいるから何も言わない。
「友達か?」
やっとあたしの存在に触れる慎さん。
「こんにちは。久遠藍人です。」
ペコッと頭を下げて、ニコッと笑う。
「こんにちは、蓮の父の佐伯慎と言います。もし良かったら上がって行くといい。」
どっちだ、そう考える必要もなさそうだ。
「ありがとうございます。良い?蓮」
「ああ。……気をつけてな」