i -アイ-
あたしに返事をしたあと、慎さんにボソッとそういった蓮はスタスタと歩き出す。
その様子を見てあたしと慎さんは目を合わせて、ニッと笑う。
秘書さんや、お付きの人たちを先に行かせた慎さん。
「あいつ、昔の俺にそっくりなんだよ。だから逆に厳しく出来なくてね。俺も好き放題してたから。でも、君が傍に居てくれてるなら安心だね」
蓮より、キリッとした男らしい顔立ちの慎さん。蓮はお母さん似なのか美形って感じ。
「自分も、父親似なんで好き放題ですけどね」
あたしがニッと笑えば、
「えー、父親似は顔だけにしてよ」
「なんですか、冗談は顔だけにしてよみたいな言い方。」
怒ったように見せれば、楽しそうに口角を上げる慎さん。
「あ、バレた?もう俺行かなきゃいけないけど、今度昔の写真見せてあげるよ」
余程、榛人と仲が良かったのか。
「あと、困ったことがあったら連絡しなさい。俺はまだ動きやすい方だからね。」
……まだ動きやすい方。
じゃあまた。そう言って慎さんは家を出ていった。
あたしは急いで中庭を通って家の中にお邪魔する。
家の中に入ったはいいが、どこに行けばいいんだ。
「……お前、何やってんの?」
キョロキョロしていると、奥から蓮が顔を出す。