i -アイ-
「早く着いてこいよ」
「ごめん、慎さんと話してた」
「何て」
「俺と似て好き放題してるだろうけど宜しくって」
「んだそれ」
冷たく答えるけど、嫌そうではない。
面白いくらい仲良いんだな、この親子。
「いいお父さんだな」
「……それはな」
……否定しない。
なんて可愛い息子なんだ。
「俺が暴れてた時代も、どんな格好で帰ってこようが、腹減ってんだろ飯食えよってしか言わねえし、何か俺に言うとしても、大事にしなきゃいけないものは死ぬ気で守れって。」
大事にしなきゃいけないものは、死ぬ気で守れ、か。
「でも、死ぬなよって。……多分親父の知り合いに居たんだと思う。守って死んだ人が」
喉の奥がぐっと詰まる感覚。
「なんでそう思う?」
「親父は、大抵へらへらしてんだよ。でも、そんときだけは真剣だった。」
そっかぁ。
「おっ!ここが蓮の部屋かぁ」
畳の部屋に、ローテーブル、本棚、バイクの模型やらなんやら。
「あんまジロジロ見んな」
すると
「蓮坊っちゃん、お茶をお持ちしました」
部屋の外から声がして、蓮が返事をすれば、お手伝いの人が部屋に入ってくる。
おばあちゃんだ。可愛いおばあちゃん。
あたしの顔を見て、目をぱちぱち瞬かせる。
……この家に来たことあるんだ。