i -アイ-
「えへへ、似てます?」
そう言えば、目を潤ませてしまうおばあちゃんを、思わずあたしは抱きしめる。
「おい」
蓮が声をかけるけど、これは見過ごせないよ。
「ここに、来たことがあるんですね?」
「……ごめんなさい。驚いてしまって」
「いいんですよ。慎さんも驚いてらっしゃいましたから。こんな格好で申し訳ありません」
そういって、おばあさんから離れる。
「藍様ですね」
涙をハンカチで拭いながらそう言うおばあさん。
「初めまして。事情がありまして、蓮さんと同じ高校に通っているんです。ここに来たことはどうか内密に」
そう話せば、何かを察したのか、ゆっくり頷いてくれるおばあさん。
「承りました。私、紗知代(さちよ)と申します。今日はごゆっくり」
そう言って紗知代さんは部屋を出ていった。
うーん、どうしたものか。
「ごめん、紗知代さん泣かせちゃった」
するとバシッと頭を叩かれる。
「お前本当に何者だよ」
「久遠藍人様です」
「うるせえよ」
それ以上は蓮も聞かなかった。
蓮の味方だと、改めて感じ取ったのかもしれない。
「さっき貰った資料、なんなんだ?」
座って、あたしはカバンから封筒を取り出す。
蓮の言葉には返さず、その封筒の中身に目を通す。
……了解。
「灰皿ある?」