i -アイ-
喧嘩についてここまで口で説明するのは初めてだ。
「喧嘩するにはある程度頭が必要ってことだね。あとセンス。……おら蓮。もう大丈夫だろ」
「ガチお前手加減しろよ」
「馬鹿じゃねえの?本気出してるわけねえだろ」
ブチブチ、と蓮の血管が何本かキレたところで。
ヴーッヴーッと鈍いバイブ音がいくつか聞こえる。
スマホを取り出すのはあたし以外の5人。
来たか。
「パーティーだな?」
あたしがそう言えば、5人ともあたしを見る。
「今週土曜の18時。黒木カンパニーの代表取締役黒木尚也(くろきなおや)の誕生パーティー。招待客は名高い金持ちとそのご令息、ご令嬢。次世代の当主となりうる人間を集める。」
5人の表情が締まっていく。
「様子を見に来るか、招待されているか。どちらにせよ、相手もいるだろうねえ」
ニイッと口角を上げるあたし。
「俺も様子を見に会場にはいます。でも、いい機会ですから人間観察をしてみて下さい。相手が榊に好意的かどうか。相手が賢ければ、演技も上手い。それを見抜けるかどうかもこれから必要になってくるでしょう。」
ブーッ
あたしのスマホが震える。
画面には名前は表示されない。