i -アイ-
「榊様、お怪我がないかの確認と、代わりのお召し物をご用意させて頂きたいのですが、宜しいでしょうか」
何も、貴方が庇わなくても。
榊亮。
あたしはこの人に会うために、黎凰に入った。
「ああ」
スマートにあたしの目を見て返事をした亮さん。
西尾はあたしに花瓶を振り下ろしたのかな。
なんか、そんな感じ。
そんな派手なことして、不利益被るのは自分だよ?
感情任せって。
呆れる。
「では、こちらへ。」
それにここはアンタが主役じゃない。
黒木にも榊にもお詫び入れなきゃね、お父さん?
後ろから西尾の父親の慌てる声が聞こえる。
丁度空きのあったスウィートルームに案内する。
「代わりのスーツをお持ちします。少々お待ちくださいませ」
「ああ。濡れたのは上着だけだ。色味の似たものであれば問題ない。」
へいへい。
なんでも俺は着こなせるってね。
「かしこまりました」
部屋を出れば、春日井さんが居た。
「榊様は」
「はい。お怪我の有無はエレベーター内でお聞きしましたが、問題ないと。スーツの方はジャケットのみで構わないそうです。」
春日井さんも落ち着いた表情はしてるけど、さすがに相手が榊なだけに緊張を感じる。