i -アイ-
「亮さん、まずごめんなさい。迷惑かけて」
頭を下げれば、亮さんはソファにドサッと座って
「いいんだ。代々榊は御庄の面倒見るのが仕事だからな」
「何それ、初めて聞いたよ」
亮さんはあたしに会えたのが嬉しいらしい。
「ねえ、やっぱり似てる?」
顎を少しあげて微笑する。
思いっきりカッコつけた顔。
「ああ、蹴飛ばしたい顔してるな」
ニヤッと口角だけ上げる亮さんは、榛人を殺した犯人と言っても普通なら信じるぐらい悪人面だ。
「ええ〜。でも嫌いじゃないでしょ?」
「嫌いとかそんな次元じゃない。面倒なやつと繋がっちまったもんだよ」
懐かしそうにあたしを見る亮さん。
腐れ縁というやつか。
榛人は明るくて軽くて自由で。
でも本当は努力家の真面目。不器用だし。
そんな面倒な人の右腕としてずっと隣にいた人だ。
きっとあたしより、榛人を理解してる。
「亮さん。会えて嬉しいよ」
ニコッと笑えば、亮さんは立ち上がり、あたしを包み込むように抱きしめた。
「ありがとう、藍。生きていてくれて」
その言葉に涙腺がグッと刺激される。
目を強く瞑り、亮さんの背中に腕を回し、力を入れる。
「亮さんも、ありがとう。生きていてくれて」