i -アイ-
「だから優しかったのか〜」
知らないフリしとこ。
「おい呑気だな」
「だって、息子の友達だからって庇ってくれたのなら、俺の友達の親父さんってだけだろ?どれだけ凄い人だとしても、それは変わらない」
友達、か。
「お前って本当に肝座ってんな」
昨日で甘えるのも頼るのも一旦区切りをつけた。
ここからまた進んでいく。
昼休みを迎え、立ち上がり蓮の方へ歩いていこうとすると、腕を掴まれた。
振り返れば、そこにいるのは
「椿さん?」
「ねえ」
腕を掴んだまま、あたしを真っ直ぐに見つめる。
「あなたは何者なの?」
その声は多分、教室中が聞いていた。
皆、気になるところだよね。
でも、
「……じゃあ、椿さんは何者?」
ふっと笑えば、キョトンとする椿さん。
「自分が何者か、君は説明できる?」
「それは…椿怜香、美容系の企業をたばねるTsubakiグループの令嬢で、黎鳳学園高等部2年……」
自分で話していて気づいたと思うけど。
「じゃあ、それにならって自己紹介をすればいい?」
言葉に詰まる椿さん。
「違うだろ?椿さんが聞きたいのはそういうことじゃない。でも、椿さんだって自分が何者か分かってない。……俺は何者なんだろうね……教えてよ」