i -アイ-
一気に表情を消せば、椿さんは青ざめる。
後ろにグイッと引っ張られる。
「藍人、やりすぎだ」
相手は女だぞ。と、蓮があたしを止める。
あたしも女だけどね。
「あはは、ごめんね。でも、ちゃんと伝えたいなと思って。椿さん」
耳元に口を近づけると椿さんは、肩を上げて硬直する。
「知らない方がいいことってあるんだよ」
わざと不気味に微笑んで見せれば、震えてしまう椿さん。
「そういえば椿さんはREIGNのファンだったよね?俺はREIGNを守る側の人間だからそれだけは安心してね」
それだけは。
蓮の横を通り、行こうと声をかける。
「あそこまでする理由は」
「別に椿さんもクラスの皆も嫌いじゃないよ。でも、危険に晒す訳にはいかない。……REIGNを守ることで手一杯だよ」
眉を八の字にして笑えば、蓮はあたしの頭をポンポンと撫でてそれ以上は聞かなかった。
この時、自分で言った言葉で1つのフラグが立った気がする。
相手は弱いものから蝕む。
なら、黎鳳の生徒は安全なのだろうか。
「蓮」
「ん?」
「死ぬなよ」