i -アイ-
「不安は付き物。俺は変に安心感は与えないよ?」
意地悪そうに笑う藍人に、眉間に皺を寄せる俺。
「人はなくしたくないものを、なくさないように必死で守るんだよ。だから、蓮」
俺に近づき、手を上げた藍人は俺の頭に手を置き、
「俺のこと、守って?」
俺の方が弱いけど、そういう意味じゃないんだろ?
「あはは、半分ぐらい理解してるかな?力で守って欲しいわけじゃないことは分かるよな」
優しい顔。
「俺はお前がREIGNにいる事で、精神的に安心するし、頑張ろうって思えるから。蓮が俺を見て一緒に歩いてくれれば、俺は絶対に居なくならない。」
不安が消えていく。
藍人の言葉は不思議だ。
「お前がそばに居てくれれば、俺は必然的にお前のそばに居る。分かるな?」
「……おう」
俺がそう答えれば、クシャクシャと頭を撫でて満足そうにまた歩き出す。
心がじんわり温かくなる気がして、口角が上がる。
俺は劣等感と隣り合わせで生きてきた。
自由にしてもらっている分、自分を探すのが難しくて、一度見失った。
そんな時に居場所を作ってくれたのが暁さんで。
存在意義をくれたのが、藍人だ。
藍人に比べれば、俺は力も心も知性も弱い。
昔と同じ、劣等感の隣にいるはずなのに、前を向ける。
俺こそ、お前が居てくれて良かったよ、藍人。