i -アイ-




そう三國が説明すると、引き寄せられるように久遠が近づいて行く。


そして、御庄榛人と刻まれた長ランの前に立ち、刺繍を指でなぞる。



「綺麗だね」


少し震える声。


「ねえ、着てみてもいい?」


振り返り、眉を八の字にして笑う久遠。


俺は、いや俺たちは息を飲んだ。


今まで、見たことがない久遠の表情だった。



「いいよ」



心做しか、暁の声が優しい。

その返答を聞き、嬉しそうに笑う久遠。


……綺麗だと、思った。


相手は男だし、俺よりも強い。

けど



「やっぱり少し大きいな」


羽織った姿に圧倒される。

久遠の言う通り、少し身幅が余っていた。



「ははっ、すげえな」


三國もその姿を見て、震えた声で話す。


「似てる?」


キリッとした顔を作る久遠。



「確かここに」


三國が棚にあるアルバムを取り、とあるページで止める。


真ん中に映る人物は、白の長ランを着ていて



「なんだこれ」


蓮が思わず声を零す。


そこに映るのは、黒髪の久遠と瓜二つの人物。



「それが、御庄榛人だよ」


写真を見ずとも、久遠はそう呟いた。


「これが26代REIGNの写真。榛人さんは24代25代と三代にわたってNo.1を張っていて、黒鷲って呼ばれてた」



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