i -アイ-
「どうした?疲れているのか」
淡々とした話し方だけど、春日井さんの普段の話し方を基準に考えると優しい声色。
「夏バテですかね。最近暑くて」
「まあ、そうかもしれないな。くれぐれも無理はしないように。そろそろ準備をするからホールに」
「かしこまりました。」
制服に着替え、髪を整え眼鏡をかける。
他のスタッフの方たちに笑顔で挨拶をしながら、ホールへ向かう。
視界に入るのは、人の列。
こちらのパーティーが始まる前に、八澄会の会食に出席する方たちは室内に入るらしい。
下っ端の人達が並んで道を作り、お偉いさんたちの姿を見えないようにする。
あたしはパーティー会場に入り、テーブルやテーブルクロスのセッティング、お花やバイキングのセッティングを行う。
美容系の方が集まるということで、プロの指示でいつもとまた違う空間を作る。
そして、招待された方たちが入ってきて2〜3時間のパーティーが終わった。
お見送りを玄関前で行い、会場に戻って片付け、掃除を行う。
それが終わり次第スタッフルームへ戻り、着替えをする。
制服のジャケットのボタンを外した時、
「久遠」
春日井さんに呼ばれた。
春日井さんの方を向き、返事をすれば、
「君に会いたいという方がエントランスにいらっしゃる」