i -アイ-
同じ人間なのかと疑ってしまうほど、異様な空気であたしを包み込もうとする名雲碧。
呑まれないよ、あたしは。
キョトンとした顔を見せれば、ニッと笑ってみせる名雲碧。
目の奥は変わらず感情が読めない漆黒。
「君はいくつ?」
あたしの情報が見つからない。
じゃあ、正面突破だ。
ってこと?
それは、うん。貴方しかできない力技かもしれないね。
「高校一年生です」
「そうか、大人びているね」
すぐに飛んでくる返答。狂気じみてる。
知っていた、君のことは知っているよ?
でも、聞いたんだ、わざと。
そう訴えかけてるみたいで。
「名前は?教えてくれるかい?」
あたしの目から、ずっと視線を逸らさない。
「久遠藍人と申します。」
あたしは、不思議そうに彼を見る。
まるで、なんの事か分からないように。
「僕の名前は、名雲碧と言うんだ。知っているかな?」
「名雲碧、さん。ああ、今日会食をされていた……」
思い出したかのように話す。
「そう。今日は春日井くんにお世話になってね」
ゾッとする。
周りは巻き込むな。
そう言いたくなる。
「そうでしたか。名雲様が、何故私を?」
あくまで冷静に、淡々と。