i -アイ-
スーツの男は八澄会佐瀬組の幹部。
その人がわざわざ手を下す少年なら、相手はREIGNってところだろう。
「どう?正解?」
「俺に質問するなら、まずは俺の質問に答えろ」
口元しか見えない男が、この状況で明るく話をしている。
それだけで、警戒対象だ。
にも関わらず、スーツの男は冷静に言葉を発している。
「ふふ。幹城京馬(みきしろきょうま)さんはさすがだなぁ。佐瀬組には勿体ない。こんな馬鹿げたこと、したくないはずだけど?」
スタスタと歩き、少年の前に行く。
幹城は少し間合いを開く。
うん、少年、息はしてるね。
「ハッ、自分のことは話さないつもりか」
「まあね。メリットがない。」
佐瀬組は今にも潰れそうな組織。
全国No.1の勢力と頭脳を持つ未成年グループであるREIGNから、人員を無理やり引き抜こうって策か?
幹城のことは調べたことがある。
なかなかやり手なヤクザのはず。
「手を引いてくれる?未成年には手を出しちゃいけないよ」
「……お前、iだろ?」
ニィッと笑う幹城。
「偽善者で有名な」
i は自分から喧嘩を売らない。そして、買うことも無い。
ただ、大人の力でねじ伏せられそうな未成年〈こども〉が居たら助ける。