i -アイ-
……まあ、そこは同感。
「そう、ですか。では少々お待ちいただけますでしょうか。スマホを持ってきますので」
「着替えもしてくるといい。家まで送るよ」
はい?
家も特定したいのね。
「今日は寄るところがありまして。」
申し訳なさそうにお断りして、後ろを向き、名雲碧から離れる。
ずっと視線を感じる。
ああ、気持ちが悪い。
女の子にはいいけど、男に見られるのはな。
相手が誰とか考えず、普通に振舞った方が良さそうだ。
こんな時になって、令嬢らしく育てられなくて良かったなって思うよ。
公立の学校にずっと通っていたし、そういう堅苦しい場に連れていくのも御庄の皆は嫌っていたから。
スマホを取りに行けば、私服姿の春日井さんが立っていた。
あたしに気が付いて、心配そうにこちらを見る。
まあ、あんまり表情変わんないけど。
「待っててくれたんですか?」
くくっ、と笑って聞けば、ため息をつく春日井さん。
「君は本当に何者なの?あの方は……」
「春日井さん」
春日井さんの言葉をわたる。
一瞬だけ鋭い目つきで春日井さん見る。
名雲碧がどこでどんな手を使ってくるか分からないから。