i -アイ-
" i " という存在は偽善者かもしれない。
でも、あたしは、御庄藍は善者になりたいわけでも悪者になりたいわけでもない。
守れればそれでいい。
家族の死をしっかりと受け止められる日が来ればそれでいい。
「三國、あなたはあたしの家族だから。どうか、あたしのお願いを聞いて欲しい。」
「……じゃあ、俺の願いも聞いてもらう」
やっと声を発した三國。
低くて、でもどこか弱々しい声。
「どこにも行かないで」
ツン、と鼻の奥が刺激された。
あたしの服をぎゅっと握りしめて、あたしを抱きしめる三國。
「……どこにも、行かないでくれ」
あたしは目を閉じる。
ぎゅっと瞑って、目を開ける頃には、
「あたしは揺るがない。心も記憶も願いも。……あたしを大切にしてくれる人が悲しむことは絶対にしないから。ただ少しだけ嘘をつくこともあるかもしれないけれど。最後には必ず笑顔で帰ると信じて欲しい」
三國を抱き締めて、体を離す。
「REIGNの皆をこれまでもこれからも頼んだよ。三國。」
ニッと笑うあたし。
あぁ、と眉を八の字にして笑ってくれる三國。