i -アイ-
まりあさんの葬式でも藍を見かけた。
榛人さんが亡くなってから、荒れていたらしい藍がまりあさんの葬式では、笑っていた。
誰よりも毅然としていて、対応もテキパキと。
まりあさんの写真を真っ直ぐに見つめる藍は、何かを覚悟したようにも見えた。
「あの子は強い」
母さんがそう一言だけ言った。
まりあさんが亡くなったということは、つまり、藍は両親とも失ったということ。
それで居て周りに気を遣う。
たった14歳。
何故彼女は、辛く苦しい人生を歩まねばならないのだろう。
そう悲観していた自分が浅ましく思えた。
「久しぶり、三國」
久しぶりに会った藍は、何故か男装をしていて、榛人さんそっくりで。
でも、やっぱり藍で。
涙が出る前に、抱き締めた。
「ごめんね、心配かけて」
俺は情けなく、首を振るしか出来なくて。
藍とまた話すことが出来て嬉しかった。
けれど、俺には暁もいる。
俺らは3人で幼なじみだから。
どちらも守るには、藍と一緒に居るべきじゃない。
でも、藍は、そんな俺よりもずっと強くなっていた。
全部を藍に背負わせたくない。
少しでも分けて欲しい。
そうずっと思っていた。