i -アイ-
そいつは、ダンボール箱に捨てられた子猫のような俺を拾った。
母さんに捨てられた俺を拾った。
父さんに道具だと思われている俺を人として扱った。
救ってくれた。
そんな大袈裟な話じゃないかもしれない。
けれど、俺にとっては、ありがたくて仕方がなかった。
「改めて、俺の名前は御庄榛人。
よろしくな、碧。」
それが、榛人と俺の始まり。
家よし、顔よし、スタイルよし、頭よしの完璧な榛人と、歪で嘘まみれでただの秀才枠な俺。
当たり前だが、俺は注目を浴びることになる。
2年でREIGNに強引に入れられたことから、もっと注目を浴び、3年になる前に素性がバレそうになり、自主退学する事になる。
自業自得だが、後悔はしていなかった。
俺は榛人に出会えて心から良かったと思っていた。
楽しいと沢山思わせてくれた。
普通ならこんなに楽しい学生生活は送れなかったのに、榛人が俺を引っ張りあげた。
「なあ、碧」
「ん?」
「学校辞めても、会おうな」
笑う榛人に、俺は答えない。
会わない。
会えない。
お互いが分かりきっていた。
……榛人は馬鹿だ。