i -アイ-
ナチュラルに男っぽく見える服装にした。
髪色や目の色に合わせて。
駅前を歩けば声をかけられる。
学校と同じくにこやかにサラリと離れる。
だんだん慣れてきた。
言われた通りに向かったカフェはそこそこ奥まったところにあり、穴場。
そんなシックでかっこいいカフェに、薄めのグレーが入ったサングラスをかけたイケおじが。
会食の時はあげていた前髪は下ろされていて、同じ方向に緩くウェーブがかかり、七三程に分けられ、片耳にだけかけている。
白のインナーに紺のCPO、紺のchefパンツ。左腕には高級ブランドの腕時計。
あたしが店に入った瞬間にこちらを見た。
GPSでも付けられた?ってレベル。
そんなに早く気付くか。
「おまたせしました、碧さん」
「いいや、俺も数分前に来たばかりだよ」
お決まりのイケメンの返し。
あたしは碧さんの前の席に座り、店員さんを呼ぶ。
「すみません、ブレンドをホットで」
郷に入っては郷に従え。
夏だから暑くてアイスが飲みたい気分だが、知らないカフェに来たらブレンドを頼むのが礼儀。
と、榛人が言ってた。
小さい頃は美味しさも分からないし、あまり飲むのを良しとされなかった。
碧さんも、初めてなのかな。
ブレンドだ。
「ここは休日にたまに来てるんだ。その時々で、ブレンド以外も飲んでみようと来るんだけどね?結局冒険しないでブレンドに収まるんだ」