i -アイ-
あたしの心を読んだようにそう話す碧さん。
「余程美味しいんですね。楽しみです」
軽く微笑めば、碧さんも微笑み返す。
「藍人は恋人はいるの?」
落ち着いたテノールの声。
極道の人とは思えない。
「いいえ。いませんよ」
「そうなの?モテるだろう」
こんな綺麗な人から言われると変な気分だな。
碧さんもモテるだろうに。
こんな、ふた周りも年下の恋愛事情など興味無いだろ。
まあ、雰囲気を和ませるためか。
「ありがたいことに、告白は沢山。でも、俺、黎鳳高校に通っていて秀才枠なんです。」
「へえ」
確か、碧さんも秀才枠だった。
その辺の情報は探せなかった。
碧さんの両親や、高校を自主退学した理由も。
「勉強に手一杯で恋愛をする余裕がなくて」
「そうか。真面目なんだな」
「碧さんは……」
名雲碧には配偶者はいない。
そのことは知っているし、職業上居なくてもおかしくはないが。
「独身だよ?恋人も長らく居ないね」
ゆったりとそう答えた碧さん。
「碧さんを知っているわけではありませんが、周りは放っておかないでしょうに」
俺の言葉に、目を細める。
「マイノリティなんだよ、俺は。」
マイノリティ?
少数派……
「え」