i -アイ-
目にかかる前髪を避けてやる。
うわ、髪柔らかっ。
って、んなことはいいんだよ。
起こしたらやばい。
眺めれば眺めるほど、藍人が美形なことがよく分かる。
なんで、御庄榛人さんとそっくりなんだ?
……つか、三國さんたちに家来てるの言ってねえけど、また怒られんのかな。
つか、何であんな怒ってたんだ?
俺以上に仲良くすんな、ってまるで嫉妬だろ。
……え?もしかして、
「んぅ」
藍人が寝返りをうつ。
顔が近づいて思わず顔を後ろに除けずらす。
確かに綺麗な顔はしてる。
男にしては華奢な方に見えるし。
……まあ男同士ってのも珍しくはないし、三國さんがそうだとしてもおかしくはないけど。
だとすると、暁さんも?
どうなってんだよ。
「ぅ」
また声を出す藍人は、眉間に皺を寄せて拳を強く握る。
何か、嫌な夢でも見てるんだろうか、
すると、一筋、涙を流した。
俺は何も考えずに、いつの間にかその拳をどうにか開いて、自分の手を握らせた。
一人じゃないと分からせたかった。
……頼りないかもしれないが。
藍人は落ち着いたように顔から力が抜け、俺の手を引き寄せた。
俺と同い歳なのにも関わらず、俺よりも沢山のものを抱えて守って。