i -アイ-




俺は幹城ってやつにやられた。


どれだけ自分の力がないか思い知った。


『生きてえならそれらしくしろ。生きるか死ぬかはてめえ次第だ』


幹城にそう問う i が不思議だった。

喧嘩に、生きるか死ぬかなんて関係ない。

誰も殺そうとして喧嘩するやつなんかいない。


けど、こいつが生きてきた世界じゃ、それが普通。


俺に死ぬなと言った時も、本気だった。


相手は鬼龍組若頭。

今まで以上に、藍人は気を張ってる。

俺らは今まで通り自分たちの身を守ることだけを藍人から求められてる。


正直歯痒い。

確かに、今は俺らが狙われていて、藍人が動きやすくなるためには俺らがやられない事が軸になる。


今は藍人の様子を相手は見ているから落ち着いているだけで、気を抜いたら藍人まで危うくなる。


「蓮坊っちゃん。慎様がお帰りになられました」


俺の部屋の前で沙知代ばぁがそう言った。


「ああ、これから向かう」


そう返事をして、藍人の頭を撫でる。


「藍人、起きれるか」


肩を竦め、俺の手をギュッと握る藍人。

俺は、少し固まった。

自分の思考回路に驚いて固まったが、頭を振ってもう一度声をかける。



「親父が帰ってきた。話したいんだろ。起きろ藍人」



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