i -アイ-
「こんなん、あったのかよ」
開いてみれば、画質の荒いケーキの映像から。
『良かったね、蓮の好きなチョコレートだ』
母親の声。
結構ガヤガヤと周りも盛り上がってて。
そのケーキの名前のところが気になった。
蓮&、その後にもう1つ文字がある。
『いやー運命的だよな。将来結婚するかもな』
楽しそうな今より少し高い声の親父。
『はあ?藍はやらねえよ?』
あい、?
『いいじゃねえか。蓮もイケメンだし藍も美人さんだし、なー?』
そう言ってカメラがかわいい服を着させられた赤ちゃんを映し、誰かが頬をつんつんと触る。
『てめえ慎、触んじゃねえよ』
『うわぁ、藍ちゃんのパパ怖いでちゅね』
カメラは藍ちゃんのパパと思われる人を映す。
カメラを持っているのが親父で、そして、藍ちゃんのパパと呼ばれているのは
「榛人、さん」
そんな周りに触発されてか、赤ちゃんの鳴き声が響き渡る。
『れーんー?よしよーし』
泣いている赤ちゃんが映る。
その赤ちゃんは蓮と呼ばれているから、きっと俺。
『同じ誕生日で同い年なんて、仲良くなるといいわね』
落ち着いた、でも凛とした声にカメラがその女性に向く。