i -アイ-
三國さんとの通話を切って、3歳の頃の動画を見る。
俺が泣いているのを、じーっと見つめてゆっくり手を頭に乗せてポンポンと撫でた。
カメラを持ってくすくす笑う大人たち。
『藍は優しいな』
『蓮はお前に似て泣き虫だな』
『ああ?いつ俺が泣いたよ』
『あんた蓮が生まれた時誰よりも泣いてたじゃない』
『夕美引いてたもんね』
夕美は俺の母さんの名前。
『蓮の鳴き声とほぼ同レベルの声量で泣くんだもん』
きっと、母さんとまりあさんが話してる。
親父、そんなに泣いたのか。
そんな話聞いたことねえな。
コンコン
部屋のドアをノックして入ってきたのは、
「蓮、話し終わったよ」
藍人だった。
「そうか」
USBを抜いてパソコンを閉じる。
アルバムに貼り直して、元通りにする。
「なあ、藍人」
立ち上がり、藍人の前に立つ。
「誕生日、いつ?」
「え?……9月12日だけど……?」
これが、親父が俺に伝えたいことか。
きっと、こいつは俺に話さないから。
話せないから。
「……そっか。俺と同じだな」
声が震えた。
涙を止められなかった。