i -アイ-
中庭は、緑が多く、噴水なんかもあって、公園のようだった。
それにしてもでかい敷地だ。
「今は暑いから人いないけど、春とかはここでランチしてる女子とかもいる」
「へえ」
お弁当とかじゃなく、ちゃんとしたランチなんだろうよ。
そんなことを考えて、周りを見渡していれば
バシャッ
冷たいものが降ってきた。
目を開ければ、視界には自分の前髪から滴り落ちる雫。
その向こうには、ホースを持って腹を抱えて笑っている旭。
「……てめえ旭」
近づこうとしたところで、滝谷が旭の頭からバケツの水をかけた。
「う、おおお!!!何すんだ岳!!!」
7月とはいえ、急に水を被るのは冷たい。
そこからは水かけ戦争。
あたしは濡れるのはあんまり良くないから避けまくる。
旭に追いかけられるから、とりあえず遠くに避難した。
「……ここどこだ?」
軽く迷子になった。
ベンチに横になる。
静かでいいなここ。
ここに居れば、そこそこ乾くだろ。
「……です」
目を閉じると声が聞こえた。
聴覚がいいとこれだからな。
そこそこ遠い場所の声でも拾ってしまう。
家では休めるように、防音の部屋を借りてるから、家では静かに過ごせるけど、1歩出れば色んな音を拾ってしまう。