i -アイ-
「悪い」
その声に目を開ける。
これは、暁の声だ。
気になって声の方に歩いていけば、暁が告白されているところだった。
ああ、これは盗み聞きしちゃいけないやつだったな。
「お好きな方がいらっしゃるんですか?」
その場を離れようとした足が止まる。
「ああ」
なんで止まるんだ、あたしの足。
「それは」
女の子の声が続く。
けれど、
「藍?」
気付かれてしまった。
仕方あるまい。
くるっと振り返る。
「ごめんなさい、聞くつもりはなかったんですけど」
女の子を見て謝る。
顔を赤らめて、首を振る女の子。
恥ずかしいよな。
「では」
ペコッと頭を下げて立ち去ろうとする、けど
「俺も行く」
どこへ?
あなたは今告白されているんですよね?
「いや、何言って」
「話は終わった」
「それは暁の中ででしょ!?」
あーあ、なんでだ。
あたしの方へ来て、肩をがっちり掴む暁。
「本当にごめんなさい。邪魔して」
女の子に謝るけど、ズンズンと歩く暁のせいで届いているかどうか。
「あのねえ!女の子は大事にしなさ」
「だからしてるだろ」
あたしの言葉を渡る暁。