i -アイ-
「幹城も、大切な人を失ったことがあるでしょう?」
あたしを見下ろして、静かに聞いてる。
「碧さんも榛人は大切な人だったんだと思うんだ。ううん、今でも大切に思ってる。そうでしょう?」
涙が出てくる。
分からない、今体がおかしいから、簡単に溢れ出てくる。
「碧さんは教えてくれないだろうから」
幹城の服を引っ張ってどうにか立ち上がる。
「教えてよ、幹城。碧さんが榛人を大切に思っているのなら、俺は」
幹城の耳元に顔を近付ける。
「あたしは、許すから」
顔を離せば、幹城は目を見開く。
「てめえのせいでこんなんなってんだからさ?責任取れよ。……REIGNの子達呼んでもいいよ、でも責任感じちゃうでしょ?でも、幹城なら"仕事"として済ませてくれるでしょ?」
あたしだってこんなこと、望んじゃいないけど。
これしかないんだから仕方ない。
「がち、うぜえ」
カクンッと膝の力が抜けて座り込む。
したことも無いけど、やりたくも無いけど、これが、1番最善。
「幹城、あとで殺されるよ」
目の前のベルトに手をかける。
幹城は、あたしの両手を掴む。
しゃがみこんであたしに目線を合わせる。