i -アイ-
眉を八の字にしてる。
「おいおい、悪党がそんな顔すんな」
「お前」
「何も言うな。仕事しろ」
こいつも、碧さんのことになると嘘が付けないのかな。
そんな、本当の顔、しないでよ。
ゆるりとあたしを抱きしめる幹城。
「悪い」
謝らないでよ……。
あたしが男だと思ってたからって、やっちゃいけない事だったよね。
「うん。ちゃんと謝りなよ」
妹さんにね。
幹城は、ちゃんと仕事をしてくれた。
熱が収まるまで。
優しくしてくれた。痛くもなかったし。
人選、大当たり。
……笑えないなぁ。
目が覚めて、床に落ちている下着を拾ってとりあえず着ける。
「体、大丈夫か」
「おかげさまで」
「……そうか」
男は馬鹿だと言うが、今大声で叫びたいね。
「おっさんは疲れただろうからまだ寝てれば」
「ぁあ?」
今回の戦いはあたしの勝ちだけど、人を巻き込みすぎた。
これは、墓場まで持っていかないと、幹城、死ぬだろうなぁ。
シャワーを浴びて、着てきた服を着る。
髪を乾かして、部屋に戻る。
幹城はベッドの上でズボンだけ履いてタブレットで仕事をしてる。
スマホを開けば、深夜3時。