i -アイ-
幹城京馬side
隣で無防備に寝る女。
朝、送っていくとは言ったが、起きないんじゃあな。
『許してあげる』
ただの、子供のようだった。
時が止まってる。
そう感じたのは、碧さん以来だ。
碧さんは、あの日で時が止まってる。
榛人、ってのは、御庄榛人のことだろう。
なら、こいつも碧さんと同じ、あの日で止まっているんだろうか。
その頃、こいつの歳は小5くらいか。
…… i 、ね。
碧さんには内緒だと繰り返した。
こいつはどこまで知っているんだろう。
碧さんが御庄榛人を殺したこと。
殺した理由。
そして、榊財閥や御庄を今でも敵に回す理由。
『教えてよ、幹城』
泣きながらそう懇願する姿が目に焼き付いた。
『碧さんが榛人を大切に思っているのなら、俺は』
力の入らない手で俺の肩を掴む。
『あたしは、許すから』
聞かれないように静かに俺の耳元でそう言った。
あれが演技なら、役者になった方がいい。
お前は、
自分の父親を殺した人間を本当に許せるのか?
お前は、御庄藍なんだろ?
今回の俺がしたことが、反則だったってのはよーく分かったし、この事が公になれば俺は蜂の巣だろう。
敵が多すぎる。
まだ、暴力沙汰とか警察沙汰で蜂の巣になるのはいい。
けど、これは参った。
責任が重すぎる。