i -アイ-
「お前は行くのか」
おっと、予想してなかった返答だ。
「俺?俺は予定があって行けないんだ。それがどうかした?」
その言葉に興味を無くしたように目線を下げた佐伯。
「じゃあ俺も行かない」
何だぁ、それ。
「あはは、俺が行くって言っても答えは同じだったろ?理由に使うなよ」
佐伯の頭をくしゃくしゃと撫でて笑う。
犬みたいだな、こいつ。
「触んな」
手を払われる。
あーら。
「ごめんごめん。じゃあな」
振り払う力が弱かった。
心許してくれてる感じかな?
「椿さん、佐伯、行かないってさ」
なんだろう、あいつ可愛いな。
「なんで笑ってるの?」
椿さんの冷たい目線に、苦笑いする。
「いいや、佐伯が面白くてさ」
滝谷の元へ戻ると、また、怖いもの知らずだと言われた。
変にプライドがある金持ちより、滝谷みたいに人懐っこかったり、佐伯みたいに素直な方がよっぽど好感が持てる。
なんだかんだ、学校楽しくなりそう。
まあ、本来の目的は忘れてないけどさ。
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「岳ー」
昼休みに教室の入口で男子数人が滝谷を呼んだ。
「おー、旭。どうした」