i -アイ-
「椎名茉結の父親は、名雲碧と面識がある。椎名茉結が近付いてきた時に調べたんです。まあ、面識があるぐらいのレベルなんで、様子を見てましたけど、貸してもらった本で気付きました。全て、名雲碧セレクトの本だなぁって。俺にコンタクトを取りたい、そういうメッセージでした」
本当は、i としての俺を探る目的だったけど、それは言わない。
コンタクトなんて、もう取ってるから。
三國が首を摩る。
「でも結局、椎名茉結のイベントは名雲碧はすぐに手を引いて、幹城に委ねたみたいです。あの時、俺が立っていられなかったのは」
これは言うべきなんだろうか。
言うべきだろうな。
「媚薬を盛られてしまって」
「は?」
全員の声が重なる。
「花火大会の会場じゃ、誰も助けてくれないだろうと思って、とりあえず椎名さんを駅まで送って行って、そこから誰に助けを求めようか考えてました」
怖いなぁ、暁と三國が一番怖い顔してるよ。
「というのは半分冗談で、誰が来るのかは大体予想はついてました。……名雲碧か幹城京馬。まあ、幹城が俺に椎名茉結と関係を持たせて最終的に弱みにしようとでも思ったんでしょうけど、駅前まで連れてくればこっちのもん。椎名茉結がゲロればアウト。そうなる前に俺を排除した方があっちとしては損が少ない」