i -アイ-
暁の腕の力が強まる。
「お前、そいつのこと好きなのか」
はい?
「違うよ。その人に頼んだのは、"仕事"として後に引かない人だって分かってたからだよ。」
「俺で、良かっただろ」
低く唸るような声。
顔をあげれば、ムスッとした顔であたしを見てた。
「あはは。嫌だよ。」
そう言えば、悲しそうな顔をする暁。
いや、表情乏しいから若干しか変化は分からないけど。
「暁とは、意味を持たせたい」
すっごい殺し文句かもしれないけど、許してね。
そういう行為は、幸せであるべきものだから。
暁を傷付けるものにはしたくない。
「でも、ごめんね。結果的にはどちらにせよ、暁を傷付けたようなものだよね」
俯いてから上を向けば、暁と距離が無くなる。
暁は少し唇を離して、あたしの額に自分の額を合わせる。
「怒鳴りてえよ」
かすれた声。
「馬鹿だろって。そんな時ぐらい自分を優先しろって。……お前が分かるまで怒鳴りてえ」
また、涙が溢れ出す。
「……怖かったな、藍」
情けなく嗚咽が漏れる。
「助けに行けなくて、悪かった」
こんな、言葉が欲しかったなんて。