i -アイ-
暁はあたしの瞼にキスをして、頬を伝う涙を指で拭ってくれた。
「……わがままで、ごめん」
一人で行動しておいて、間違えたら泣いて帰ってくるなんて。
「そんなの昔からだろ」
暁だから、許してくれるんだよね。
「ありがとう、暁」
「お前が俺らを守るなら、俺がお前を守るから。だからなんかあったら俺に連絡しろ」
ダメだなぁ。暁は全部くれる。
「ダメだよ。暁があたしのところ来たら、皆を誰が守るの。」
「あ?固まって動けっつったろ。全員連れてくるから気にすんな」
あーあ、なんてこった。
あたしはクスクス笑う。
「で、意味って?」
あたしの頬を包んで暁の方に顔を向けさせる。
そこは察してくださいっていう、やつ。
「やだ」
「はあ?」
「今のあたしは久遠藍人だから、やだ」
「どういうことだ」
「全部終わって、御庄藍に戻れたらにしよう」
「んだそれ。それまでお預け食らっとけってか?」
「……そういうこと」
あたしは暁から離れてソファに蹲る。
ギシッとソファが軋んで、隣に暁が来たのが分かった。
抱き締められていた時の、暁の鼓動を思い出す。
耳まで熱くなる。
ツン
「…っ!」
脇腹をつつかれた。