i -アイ-
「藍人」
声をかけられ顔を上げれば、蓮がポケットに両手を入れて立ってる。
「溜まり場行く?」
「ん」
最近、蓮も少しおかしい。
蓮の家に行って、慎さんと話終わったあと、あたしが誕生日を言えば、蓮は泣き出してあたしを大切そうに、それでいて強く抱きしめた。
……慎さんはあたしが知らない何かを蓮に教えたんだろうか。
ドンッ
……ただの生徒の足音しか、聞こえなかったな。
また、しくったな。
「藍人!!!」
蓮があたしに手を伸ばす。
ああ、逆光で顔が見えない。
男子生徒、か。
手、大きかったもんな。
でもきっと、探し出すよ?あたしは。
あたしが笑えば、上がっていた口角を下げるその生徒。
ビタンッと手で地面を叩いて受身を取る。
けど、結構な段数を転げ落ちた。
頭に生ぬるい温度を感じる。
あー、頭打った?
「藍人!!!」
でかい声、出すなよ。
「れ……ん、保健の先生、呼んで」
「あ、あぁ!ちょっと待ってろ」
そう言って立ち上がろうとする蓮の腕を掴む。
「呼んだ、ら……れ、いん全員一緒に、居て……?」
その言葉に顔を顰める蓮。
頼んだよ、蓮。
あたしは、意識を手放した。