i -アイ-
「藍人くんが」
「凄い、血出てたって」
先生たちが急いで藍人の血を掃除して、教頭が理事長に電話をして、他の生徒の対応をした。
藍人を見送ってから、メンバー全員に連絡をして校庭に全員が集まる。
「何があったんだ」
三國さんに胸ぐらを掴まれる。
「……蓮、答えろよ」
いつもの三國さんじゃないみたいだ。
俺の胸ぐらを掴んでいる手が震える。
「なんで、なんでなんだよ」
声も、震えている。
俺じゃなくて、違う何かを見ているようで、俺は何も言えなくなる。
「……っんで、あいつばかりが苦しまなきゃいけないんだよ……なんで」
三國さんが子供のように泣きじゃくる。
誰よりも、藍人を、いや、御庄藍を見てきたから。
苦しんできた御庄藍を見てきたんだろう。
「三國」
暁さんが一言。
「行こう」
そう、憤りを押し殺すように言った。
その声を聞いて、グッと手に力を込めた三國さんが、腕で涙を拭う。
息を整えながら、俺の襟元を直す。
「悪い、取り乱した」
無理やり、俺に笑った。
その笑顔が、藍人に似ていて、心が痛かった。
御庄藍と橘三國は、母親が姉妹の従兄妹だったはず。