i -アイ-
身が引き裂かれるように、辛いだろう。
「……藍人は、落ちる時、俺の後ろを、多分落とした人間を見て、笑ったんです。」
俺がそう伝えると、キョトンとする三國さん。
すぐに、ふっと笑って
「あいつは本当に馬鹿だな」
「笑えねえ」
三國さんに続いて暁さんが呟く。
きっと、後で覚えてろっていうメッセージだったんだと思う。
5人で門を潜り、迎えの車を待つ。
すると、見知らぬ車が目の前に止まった。
そして、車から降りてきたのは
「どうも、初めまして。……ああ、佐伯の坊ちゃんは久しぶりかぁ」
体が固まる。
こいつは、幹城京馬だ。
黒パーカーのフードを目深に被り、サングラスを付けているため、声でしか判断できないが。
「……俺をやろうとした奴です」
そこで、全員ピンと来た。
幹城に会ったことがあるのは、俺と藍人だけ。
「ふーん、お前って声で分かるのか?あいつみたいだな」
「今はお前に構ってる暇はない。消えろ」
暁さんが温度のない声で言い放つ。
ビリビリと周りの空気が殺気を帯びる。
「おー、強気だな。さすがNo.1。こうでなきゃなぁ。あいつは俺を見て笑うからな、拍子抜けしちまう」
あいつ。
こいつがさっきからそう繰り返すのは、藍人のことか。