i -アイ-
「酷い言い方するなぁ。ボランティア、って言ってよ」
「その偽善活動にメリットはあるのか?」
「だからぁ、偽善活動とか言わないでよ。僕は心が綺麗なだけ」
そんなこと1ミリも思ってないけどね。自分でも。
「それに、幹城。お前には佐瀬組に居てメリットあるの?」
「ああ、あるね。これは仕事だ。金のためだよ」
お互いにそこから前に進み、間合いを縮め、拳と脚で相手の急所を狙う。
丸腰で戦えるのは、子供相手にヤクザである彼に武器、つまり銃は必要ないからだ。
相手の体躯からして、力の差は歴然。だから、スピードで戦う。
「ハッ、サーカスかよ」
無駄を省きながら飛び回る。
「どう?楽しめた?」
数分で肩で息をし、目の前で跪く幹城。
転がっている金髪のように、頭を赤く染めたくて、頭を蹴りあげ飛ばす。
「ガッァ……」
仰向けで倒れる幹城の両肩に両膝を当てるように馬乗りになり、首の動脈を爪でなぞり、喉仏を押す。
「生きてえならそれらしくしろ。生きるか死ぬかはてめえ次第だ」
呼吸とともに動く喉仏が、クッと上に動く。
「そ、うだなぁ……生きなきゃなぁ」
幹城はそう言って1粒涙を流した。